研究活動

【研究会】失われたロマ/ジプシーを求めて『ラッチョ・ドローム』にみる「ジプシー」表象の光と影【終了】

日時:2021年10月30日(土)15:00-16:00(終了しました)
講師:岩谷彩子(京都大学)
会場:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟地下1 B05教室 (ZOOM 要申し込み)

発表要旨: 1993年に制作されたトニー・ガトリフ監督の映画『ラッチョ・ドローム』は、インドから世界に離散したとされるロマ/「ジプシー」の足跡を、現在の「ジプシー」が各地で従事する芸能(歌、踊り、楽器演奏)を通じて模擬的に辿る映画です。
豊かな音と映像とともにロマ/「ジプシー」世界の多様性を描いたこの映画は、世界に離散するロマ/「ジプシー」社会表象の雛型となり、1990年代以降「ジプシー音楽」ブームの火付け役ともなりました。
その一方で、ドキュメンタリーを模した表象は、ロマ/「ジプシー」の歴史と社会環境をミスリードしてしまいかねない危険性もはらんでいます。
この研究会では、映画の視聴と、映画で描写されている社会背景についての解説を通して、自らも「ジプシー」の血を引くトニー・ガトリフ監督が追い求めたロマ/「ジプシー」の〈Home〉の描き方について検討します。(岩谷彩子)

講師プロフィール:
岩谷彩子(Iwatani Ayako)
 文化人類学。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。インドの商業移動民および世界でロマ、「ジプシー」と呼ばれてきた人々の文化人類学的研究にたずさわる。夢や建築物、音楽や踊りなど、彼らのコミュニティの境界を形成するさまざまな装置を「記憶の媒体」としてとらえ、その特徴について考察している。著書に『夢とミメーシスの人類学―インドを生きぬく商業移動民ヴァギリ』(明石書店)、『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』(せりか書房)、分担執筆に「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」(斉藤綾子・竹沢泰子編『人種神話を解体する 第1巻Invisibility―「見えない人種」の表象』、東京大学出版会)、『アフェクトゥス(情動)――生の外側に触れる』(京都大学学術出版会)など。                    


【共催】
・科研基盤研究(A)「トランスナショナル時代の人間と「祖国」の関係性をめぐる人文学的、領域横断的研究」(代表:岡真理)
・科研基盤研究(B)「ディアスポラの記憶と想起の媒体に関する文化人類学的研究」(代表:岩谷彩子)